グッピーの体色と遺伝子の関係
グッピーのオスの体色は,脳や神経のもととなる細胞(神経堤細胞)から発生していることが分かっています。このことは,見た目の美しさと,行動特性や性格のような内面の特性が,遺伝子によって,密接に関連している可能性を示しています。

グッピーの体色を決める遺伝子は,オスもメスももつ常染色体と性決定に関わる性染色体の両方に存在します。この遺伝子は黒色や赤色など主要な色を決める遺伝子のほか,色の濃度や色調を変える遺伝子,模様をつくる遺伝子など多岐にわたるものが含まれており,体色のパターンは無数にできると考えられます。
こうした遺伝的な複雑さは,気候変動や寄生虫といった外部環境の変化に柔軟に対応し,種全体が生き残る可能性を高めると考えられます。
環境がグッピーの体色を形作る
グッピーのオスの体色は,その生息環境によっても大きく異なります。特に,捕食者の存在が体色に強い影響を与えています。
- 捕食者が少ない環境(安全なところ):捕食者が少ない環境では,派手なオスが目立ってメスに選ばれやすくなります。メスは,オスの体色,特にオレンジ色の斑紋の大きさや鮮やかさを指標に配偶者を選びます。派手なオスから生まれた子は父親の体色を受け継ぎ,捕食者から逃げる能力や藻を探し出す能力が高いことが示されており,メスにとって派手なオスを選ぶことには利益があります。この環境では,派手な体色が子孫を残す上で有利に働き,より派手なオスが増えていきます。
- 捕食者が多い環境(危険なところ):捕食者が多い環境では,派手なオスは真っ先に食べられてしまいます。そのため,地味な体色のオスの方が生き残り,多くの子孫を残すことができます。その結果,この環境にすむグッピーのオスは,全体的に地味な体色のものが多くなる傾向にあります。
さらに興味深いのは,同じ集団内でも体色の多様性が保たれていることです。これは,メスが珍しい体色パターンを持つオスを好む傾向があるためと考えられています。ある集団で派手なオスばかりがモテると,今度はそれまで目立たなかった地味なオスや,新しい色を持つオスが珍しい存在として注目されるようになり,多様性が維持されるのです。
【参考資料】
- 佐藤綾. “グッピーにおける性淘汰とオスの体色の多様性” 動物心理学研究, 2018, 68 巻, 1 号, p. 89-97.
