【進化View】鳥類の肺の進化と酸素環境

鳥類の肺の進化と酸素環境

ヒトを含む哺乳類では肺は多数の「肺胞」とよばれる袋状の構造からなり,空気のとり込みと排出が同じ経路で行われる。一方で鳥類の肺は「気のう」とよばれる複数の袋とつながった複雑な構造をしており,肺には常に一方向から新鮮な空気が流れ込む(図1 )。この構造の違いにより,鳥類の肺は哺乳類の肺に比べてガス交換の効率が高い。

ヒトは高地では酸欠におちいるが,一部の鳥類はヒマラヤ山脈を飛翔により越えることができる。鳥類の気のうは現生の鳥類と恐竜(獣脚類:竜盤類に含まれるグループ)の共通祖先で進化したと考えられており(図2),少なくとも一部の恐竜にも気のうがあったことがわかっている。

古生代ペルム紀の終わりに大気中の酸素濃度が大幅に低下したことが知られており,恐竜が出現した中生代三畳紀は現在よりも酸素濃度が低かった(図3)。気のうは低酸素への適応として進化してきたとする説がある。

【参考文献】

  • ピーター・D・ウォード.垂水 雄二訳.恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた.文藝春秋,2008
  • O’Connor , P . M . & Claessens , L . A . M . 2005 Basic avian pulmonary design and flow-through ventilation in non-avian theropod dinosaurs. Nature 436, 253
  • Costa , K . M ., Accorsi-Mendonça , D . , Moraes , D . J . A . , Machado , B . H . 2014 Evolution and physiology of neural oxygen sensing. Front. Physiol. 5, 302