【進化View】行動に対する4つの観点

行動に対する4つの観点

行動に対する4つの観点は,互いに関連しあっている。生物が示す複雑な性質(美しいさえずりで配偶者を獲得するなど)は,自然選択がかかることで進化する。すなわち,何世代にもわたり自然選択がかかり続けることで「機能」(③)が洗練される。自然選択は適応を生じさせるので,機能(③)は行動がどういった適応に関わっているかを問題にしている。また,自然選択による行動の変化は進化の過程のどこかで生じたはずであり,これを問題にするのが「系統進化」(④)である。鳥のさえずりのような機能(③)は,さまざまな生理的・形態的なしくみに支えられている。どういったしくみによって機能が実現されているのかを問題にするのが「しくみ」(①)である。鳥のさえずりであれば,発声のための のど の構造や,筋肉を動かす神経系が必要となる。配偶者を獲得するためのさえずりは繁殖期に限られるため,季節的なホルモン量の変化などもさえずりのしくみの一部かもしれない。また,さえずりを可能とするようなしくみは個体の発生・成長の過程で獲得される。この過程でどのようにそのしくみが獲得されるかが「発達」(②)である。多くの鳥は,成鳥のさえずりを聞くことで,さえずり行動を学習する。このように「なぜ鳥はさえずるのか」という問いに対して,4つの異なる視点からの回答が可能である。

これら4つの観点は行動だけではなく,形態などにも当てはめることができる。たとえば,ガの一種であるオオシモフリエダシャクの体色は,もともと明るい色であったが,19世紀のイギリスでは,突然変異によって生じた暗い色の個体の数が増加した。当時,工場のばい煙により黒くなった樹皮の上では,暗い色の個体のほうが目立たず,捕食されにくかったためと考えられる。このオオシモフリエダシャクの「暗い体色」について,4つの観点で考えてみよう。