理科便覧ネットワーク

科学館の展示を考える

学芸員 小塩哲朗さん [科学館]

どのような仕事ですか

科学館は,さまざまな科学や技術について,いろいろな方に知ってもらうための施設です。私は科学館のがくげいいんとして,じょうせつの展示品を考えたり,科学教室を企画・実施する仕事をしています。

いちばん大きな仕事は,「特別展」とよぶてんらんかいを企画・運営することです。特別展では,学芸員がテーマを決めて,展示品をつくったり借りたりし,解説パネルをつくり,映像を見られるように手配し,また体験コーナーも考えます。

特別展を見てくれた人が,そのテーマの科学について知るだけではなく,もっと知りたい,もっとやってみたい,と思えるようなものになるよう心がけています。

なぜこの仕事を選びましたか

私は,もともとは研究者を目指していました。しかし,研究者だけではなくもっと広い範囲の人々の役に立つ,教育のような仕事に興味をもつようになりました。

そんなときに,今の職場で学芸員のしゅうをしていることを知りました。学芸員とは,研究者などの専門家がもっている深い知識を,わかりやすく一般の人々に伝えるのが仕事で,自分がイメージしはじめていた仕事にピッタリだと思ったので,だいがくいんはくてい)をやめて学芸員となり,現在にいたります。

この仕事で,やりがいを感じるときを教えてください

私は「科学はおもしろい」「どんなところにも科学がかくれている」と思っています。

物理や化学と書くと難しそうですが,たとえば,おにも物理・化学が隠れています。ふだん,人々が気づかない,そういう「科学」を紹介して,「科学はおもしろい」と感じてもらおうと,いろいろな展示や科学教室を実施しています。かんらんしゃや参加者が「そうか!」「へぇ~」と興味をもってもらえることが,この仕事でいちばんやりがいを感じることです。

この仕事で必要な力・資格などを教えてください

まずは,専門家の知識を理解できることです。一般の人々と同じ知識レベルであっては,この仕事はできません。そして,自分が理解したものを,どのように解説したら一般の人々が理解できるかを理解していること。これは,一般の人々の理解のしかたやそのすじみちぶんせきできなければなりません。解説のためには,文章力も必要です。自分がわかっていることと,人にわかってもらうことはまったく別なのですが,このちがいをきちんとあくしている必要があります。

また,学芸員というかたきは,大学で必要な授業の単位をしゅとくしたり,実習をじゅこうしたり,あるいは国家試験での合格が必要であったりします。さらに,学芸員という職は,その人数が絶対的に少ないので,なかなかチャンスがありません。私のまわりの学芸員には,なりたくても募集がなかったので,ふつうにしゅうしょくして仕事をしながら,学芸員の募集が出るのを待っていた,という人がたくさんいます。自分がなりたいと思ったときに,その職が募集されているという「運」も必要ですね。