吉野彰
プロフィール
よしのあきら
日本
1948年1月30日 ~
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ノーベル化学賞 (2019年) 「リチウムイオン二次電池の開発」
おもな業績
- リチウムイオン二次電池の基本構造を確立(1985年) −極に炭素素材を使ったリチウムイオン二次電池の基本を確立した。
解 説
マイケル・ファラデーの「ロウソクの科学」という本に影響を受け,科学に興味をもつようになったと言います。ファラデーは,電磁気学などの研究をしたイギリスの科学者で,1860年にファラデーが行った講演をまとめたものがこの本です。ロウソクを題材にして,科学のさまざまな現象を説明しています。
新しいものを科学の力で生み出したい。そのように考えて,大学の工学部に入りました。そこには,ノーベル化学賞を受賞した福井謙一がいて,その講義も受けました。その後,繊維会社に就職して,リチウムイオン二次電池の研究をすることになりました。
リチウムを使えば高性能の電池ができますが,リチウムは反応しやすく,爆発などの危険があります。安全で高性能な電池は,さまざまな分野で期待されていました。
吉野は,最初は,白川英樹(2000年ノーベル化学賞受賞)が開発したポリアセチレンを,−極に使うことを考えました。+極には,アメリカのジョン・グッドイナフが開発したコバルト酸リチウムを考えました。でも,なかなかうまくいきませんでした。
次に,炭素を−極にすることを考えました。炭素の素材を探しているときに,炭素繊維に出会います。吉野の会社は繊維会社で,炭素繊維も扱っていました。それを活用した電池がうまくいき,現在のリチウムイオン二次電池の原型が完成しました。
吉野は,グッドイナフ,イギリスのスタンリー・ウィティンガムとともに,2019年のノーベル化学賞を受賞しました。ウィティンガムは,はじめてリチウムイオン二次電池をつくった科学者です。
現在では,ノートパソコン,タブレット,スマートフォンのような電子機器,電気自動車など交通の分野,発電した電気の蓄電などエネルギーの分野,人工衛星や探査機など宇宙の分野,…と,いろいろなところでリチウムイオン二次電池は使われています。