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山中伸弥

プロフィール

やまなかしんや

日本

1962年9月4日 ~

  • ノーベル賞
    ノーベル生理学・医学賞 (2012年) 「成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見」

おもな業績

  • マウスのiPS細胞の作成(2006年) 4つのでんを導入して,マウスのからだの細胞を初期化できることを示した。
  • ヒトのiPS細胞の作成(2007年) 4つの遺伝子を導入して,ヒトのからだの細胞を初期化できることを示した。

解 説

医師をめざし医学部に進学して,せいけいになりました。しかし,思うようにかんじゃを救えず,もっと基礎的な研究を行い,広く患者を救うことができないものか,と考えました。そして病院をやめ,大学で再度学びはじめました。その後,アメリカに留学して研究を続けました。

日本に帰ったのちも研究生活を送っていましたが,思うように研究ができず,もう一度医師に戻ろうかとも考えたほどでした。しかし,別の大学に移って,よりよい環境になり,また研究にせんねんしました。

動物は,1個のじゅせいらんぶんれつをくり返して,さまざまな細胞に変化してからだができあがります。そして,からだのどこかのさいぼう,たとえばきんにくの細胞やの細胞は,受精卵とはちがって,もうほかの細胞にはなりません。

からだの細胞が,受精卵のように,どのような細胞にも変化させることができたら,それをりょうなどに活用できるのではないか。このような細胞を「初期化」する研究は,かなり以前から進められていました。

からだの細胞にいくつかの遺伝子を加えることで,細胞を初期化できるのではないか。山中は,そのように考えて実験を重ね,4つの遺伝子(やまなかいん)を発見しました。からだの細胞に,これらの4つの遺伝子を導入すると,受精卵のような細胞に初期化できたのです。この細胞をiPS細胞と名付けました。

iPS細胞の研究はいっきに広がり,やくひんの開発やさいせいりょうの研究など,その応用がはじまっています。

山中は,イギリスのジョン・ガードンとともに,2012年のノーベルせいがく・医学賞を受賞しました。ガードンは,山中の研究のおよそ40年前,カエルのからだの細胞のかくを,核をこわしたじゅせいらんしょくする実験を行いました。この細胞がカエルにまで成長することが確かめられました。からだの細胞の核には,からだのすべての細胞をつくる能力があり,未受精卵には,その能力をとり戻す何かがあることを示したのです。その何かを,遺伝子として発見したのが山中でした。