利根川進
プロフィール
とねがわすすむ
日本
1939年9月5日 ~
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ノーベル生理学・医学賞 (1987年) 「多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明」
おもな業績
- 多様な抗体をつくり出すしくみの解明(1977年) 多様な抗体をつくる遺伝子は,遺伝子が再編成されてできていることを発見した。
解 説
大学では,最初は化学を学びました。大学院でウイルスの研究をはじめましたが,新しい分野である分子生物学へと気持ちが傾きました。分子生物学を学ぶならアメリカがよいだろう,ということで,恩師が後押ししてアメリカの大学に行きました。そこで,最新の分子生物学の手法を学びました。
その後,スイスのバーゼル免疫学研究所に移り,そこで免疫の研究をはじめます。免疫は,細菌やウイルスなどの外敵の感染やがん細胞から,からだを守るはたらきをします。抗体をつくって,外敵のはたらきをおさえるのも,免疫の1つです。抗体は,さまざまな種類の外敵を識別して,それだけにはたらくという特徴があります。
からだは,さまざまな機能をもっていて,それらの機能を担う遺伝子をそれぞれにもっているはずです。無数にある外敵にそれぞれに対応する抗体をつくるためにも,それぞれに遺伝子が必要ですが,ヒトがもっている遺伝子の数には限りがあります。限りある遺伝子で,無数の種類の抗体をどうやってつくるのか。それはなぞでした。
利根川は,最新の分子生物学の手法を使って,このなぞに挑みました。そして,無数の種類の抗体をつくる多様な遺伝子のしくみを解明しました。遺伝子は一定のかたまりごとに再編成して,いろいろな組み合わせをつくっていることを証明したのです。
この研究は画期的で,世界から賞賛を受けました。この業績により,利根川は,1987年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。他の追随を許さない研究で,単独の受賞でした。また,日本人としてはじめてのノーベル生理学・医学賞の受賞です。