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下村脩

プロフィール

しもむらおさむ

日本

1928年8月27日 ~ 2018年10月19日

  • ノーベル賞
    ノーベル化学賞 (2008年) 「緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見と開発」

おもな業績

  • ルシフェリンの結晶化(1957年) ウミホタルがもつ光るタンパクしつであるルシフェリンのせいせいに成功した。
  • ルシフェリンの構造の解明(1959年) ルシフェリンの構造を解明した。
  • イクリオンの発見,精製(1962年) オワンクラゲがもつ光るタンパク質イクリオンを発見し,精製に成功した。
  • 緑色蛍光タンパク質の発見(1962年) オワンクラゲが緑色に光るしくみを解明した。

解 説

はじめはやくがくを志して長崎大学薬学部に入学しましたが,戦後の混乱のためにしっかりした教育を受けられませんでした。その後,名古屋大学に移り,そこでぶんせいぶつがくの研究のための指導を受けました。その後,最初に与えられた研究テーマは,ウミホタルのタンパク質ルシフェリンの精製でした。

ウミホタルが光るのは,ルシフェリンというタンパク質のはたらきによることはわかっていましたが,ルシフェリンを精製することは,世界でもまだだれも成功していませんでした。アメリカのプリンストン大学の研究チームが,20年かかってもできていないなんだいだったのです。

しかし下村は,この研究にぼっとうして,わずか10か月で精製に成功しました。そして次に,ルシフェリンの構造を解明しました。これにより下村は注目されるようになり,けんきゅうきょてんをアメリカに移しました。はじめはアメリカに渡ることをためらいましたが,家族のすすめもあって決断しました。

アメリカでも海の生きものの光るタンパク質の研究を行いました。オワンクラゲは緑色に光ります。オワンクラゲも,ウミホタルのようにルシフェリンをもっていると考えられていました。それを精製することからはじめましたが,ウミホタルの光るタンパク質は,ルシフェリンではないことに気づきました。

家族の協力にささえられながら,大量のオワンクラゲを使ってぶんせきを行い,1962年,光るタンパク質であるイクリオンを発見,精製しました。しかし,オワンクラゲは緑色に光るのに,イクリオンは青色に光ります。さらに研究を続けて,同じ年,ついに緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見したのです。

光を受けたイクリオンは,青色の光を出します。GFPは,その光を受けて緑色に光ることがわかりました。下村はこのしくみと,イクリオンやGFPの構造を解明しました。そして,また別の光るタンパク質の解明へ,研究を移していきました。

1990年代になり,GFPのでんが解明されました。そして,GFPが遺伝子研究に活用されるようになりました。GFPは,がいせんをあてると緑色に光るため,目的の遺伝子の前や後にGFPの遺伝子を組みこむことで,遺伝子がはたらく場所や時期が確認できるようになるのです。GFPは遺伝子研究に欠かせない道具となりました。

写真:GFP遺伝子を組みこんだ大だい腸ちょう菌きんに紫外線を当てたようす

そして,下村は,GFPを発展させたアメリカのマーチン・チャルフィー,ロジャー・チェンとともに,2008年のノーベル化学賞を受賞しました。