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大村智

プロフィール

おおむらさとし

日本

1935年7月12日 ~

  • ノーベル賞
    ノーベル生理学・医学賞 (2015年) 「センチュウの寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」

おもな業績

  • アベルメクチンの発見(1979年) せいするセンチュウのじょする薬品であるアベルメクチンを発見した。
  • イベルメクチンの開発 アベルメクチンの構造を調べて,同様の薬品であるイベルメクチンを開発した。

解 説

大学を卒業したのち,大村は高校理科の教師になりました。ていせいの工業高校で生徒たちが熱心に学ぶ姿をみて,もう一度勉強をしようと思い立ち,教師を続けながらだいがくいんに進みました。その後,研究者となって,こうせいぶっしつ(薬になるぶっしつ)の構造を解明しました。

さまざまな場所から土をさいしゅして,その中の成分を調べて,薬に使える物質を探しました。独自の方法をこうちくして,多くの有用な物質を発見しました。

その中でも,アベルベクチンは,動物に寄生するセンチュウをとり除く(駆除する)のに有効な物質でした。ちくやペットに寄生して,健康を損なうせいちゅうを駆除する薬(抗寄生虫薬)として,使われるようになりました。

このような薬を寄生虫に苦しむ人たちに届けたい。大村はそのように考えて,貧しい地域へしょうていきょうすることを条件に,アメリカのメルク社と,新たな薬の共同開発を行いました。そして,アベルメクチンの構造を調べて,同様の薬品であるイベルメクチンの開発に成功したのです。

熱帯地方にオンコセルカ症という寄生虫による病気があります。オンコセルカ症は,視力をうばうこともあり,生活に大きな影響を与えていました。メルク社と,大村が所属しているきたさとけんきゅうしょが,イベルメクチンを無償提供し,かいけんかん(WHO)を通じて,オンコセルカ症の流行地域に届けました。その効果はぜつだいでした。

大村は,このような薬の開発により,アメリカのウイリアム・キャンベルとともに,2015年のノーベルせいがく・医学賞を受賞しました。この年のノーベル生理学・医学賞は,マラリアのりょうやくの開発により,中国のトゥヨウヨウも受賞しています。

大村の研究室で発見された物質は非常に多く,イベルメクチン以外にも,こうせいちゅうやくこうきんやくこうがんざいなどのやくひんに使われています。