小柴昌俊
プロフィール
こしばまさとし
日本
1926年9月19日 ~ 2020年11月12日
-
ノーベル物理学賞 (2002年) 「天体物理学,特に宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献」
おもな業績
- ニュートリノの観測(1987年) 自ら設計した観測施設カミオカンデで,太陽系外で発生したニュートリノの観測に成功した。
解 説
原子核をつくる陽子は,非常に長い時間をかけて崩壊することが,物理学の理論によって予想されていました。小柴は,陽子が崩壊するときに放出する粒子を観測して,陽子の崩壊を確かめようと考えました。
そのための観測装置を設計し,その観測施設を岐阜県の山の中につくりました。それがカミオカンデです。真っ暗な巨大なスペースに水をためておき,そこを粒子が通過したときに生じるわずかな光を観測するものです。さまざまな粒子の影響を防ぐために,山の中につくったのです。
1987年,大マゼラン星雲で起きた超新星爆発で生じたニュートリノという粒子が地球に届きました。カミオカンデは,そのニュートリノをとらえました。陽子の崩壊という本来の目的とは異なりますが,宇宙からのニュートリノの観測という機会を逃さず,観測を行いました。
ニュートリノは,物質を透過する性質が非常に高いので,ちょうどX線を使って体内を見るように,ニュートリノを観測することで,宇宙のすがたを見ることができます。小柴は,ニュートリノ天文学という新しい分野を切り開きました。
この観測の成果から,小柴は,アメリカのレイモンド・デービスとともに,2002年のノーベル物理学賞を受賞しました。また,この年,アメリカのリカルド・ジャコーニも,X線天文学のパイオニアとして,ノーベル物理学賞を受賞しました。
その後,カミオカンデよりも大きく高性能になったスーパーカミオカンデがつくられ,その観測によって梶田隆章が2015年のノーベル物理学賞を受賞しました。