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錬れん金きん術じゅつとは，「卑金属から貴き金きん属ぞくをつくり出すこと」とされている。貴金属という語は耳にすることも多いが，卑ひ金きん属ぞくとは何であろうか。

まず，「貴金属」とは，さびにくく美しい金きん属ぞく光こう沢たくを保つ金や銀などの金属をさす。これらは産出量も少ないため，貴重な金属とされ，昔から貨か幣へいにも利用されていた。一方，「卑金属」は「貴金属」に対する語で，銅や鉄，鉛などの金属をさす。化学的には，卑金属はイオンになりやすい金きん属ぞく，貴金属はイオンになりにくい金属と説明することができる。

現代の科学の知識から見ると，錬金術は原げん子しの種類を変えることであり，化か学がく反はん応のうでは不可能なことである。したがって，錬金術そのものは失敗に終わったが，蒸留器の開発など実験に必要な技術や物ぶっ質しつの性質に関する知識の蓄積は，その後の化学の研究に役立ったといわれている。