りかびんPlus - ウリ科は合弁花類か離弁花類か?
日本の多くの植物図鑑や中学校の教科書では,双子葉類を合弁花類と離弁花類の2つに分類している。現在よく使われている図鑑には,ウリ科を合弁花類としているものと,離弁花類としているものがある。なぜ図鑑によって分類が異なるのだろうか。
ウリ科の植物は,つる性で巻きひげをもつ草で,5枚の花弁がくっついた形の合弁花,側膜胎座(子房の壁に胚珠がつく)のめしべをもつ雌花と5本のおしべをもつ雄花,ウリ状果とよばれる果実といった,他の科とは大きく異なる特徴を持っている。このため,ウリ科をどこに分類するかは,研究者によってさまざまな説がある。
よく使われている合弁花類と離弁花類の分類は,ドイツの植物学者エングラーによる分類体系(1892年)がもとになっている。エングラーの体系では,花弁やおしべ,めしべのつくりを重視している。このため,ウリ科は,5枚の花弁がくっついた形の合弁花をもつキキョウ科に近いものとして,合弁花類のキキョウ目に分類されている。
エングラーの体系はその後修正され,1964年にドイツの植物学者メルヒオールらによってまとめられた。これは「新エングラー体系」とよばれているものである。これ以前の体系は「旧エングラー体系」とよばれる。
新エングラー体系では,ウリ科は離弁花類(古生花被植物亜綱)とされ,ウリ目としてスミレ目のとなりに移されている。この分類体系では,ウリ科はスミレ目のトケイソウ科に近いとされている。トケイソウ科はつる性の草で,側膜胎座をもつという点がウリ科と共通している。
図鑑によって,旧エングラー体系によっているもの,全部または一部に新エングラー体系を採用しているものなど,さまざまなものがある。このため,ウリ科は合弁花類に分類されている場合と,離弁花類に分類されている場合がある。
なお,植物の分類は,エングラーの体系の他にもさまざまな分類体系が提唱されている。エングラーの体系は,被子植物は単純な形の花から複雑な形の花に進化していった,という考え(偽花説)をもとにしている。これに対し,多数の花弁,おしべ,めしべをもつモクレン科のような花を原始的とする考え(真花説)をもとにした分類もある。たとえば,アメリカの植物学者クロンキストの体系(1988年)では,真花説をもとに,双子葉類(モクレン綱)を6つに分類している。さらに,近年では,DNAの配列から進化の過程を推定し,それをもとにした新しい分類体系の構築が進められている。