最新図説公共 問いの解答例

第4章 現代の経済社会
7 金融の役割

日本経済の安定・発展のために,金融機関や日本銀行はどのような役割を果たしているのだろうか?

資金調達をする場合,株式の発行と銀行からの借り入れでは,どちらが有利だろうか?

視点  ➀巨額の資金を集める場合,➁高リスクだが大きく成長しそうな事業に挑戦する場合,の2つで考えよう。
効率

解答例

➀巨額の資金を集めたい場合
  • すでに知名度のある大企業であれば,株式発行による調達が有利である。多くの投資家から出資を募ることで,返済義務のない「自己資本」として巨額の資金を確保でき,財務基盤の強化につながる。
  • 知名度が低い企業の場合,株式発行でいきなり巨額の資金を調達することは難しい。そのため,銀行融資による調達が現実的である。事業の将来性や収益性,社会貢献度の高さやリスクの低さ,万一の際の担保の存在などを丁寧に説明し,銀行との信頼関係を築くことで,返済義務のある「他人資本」ではあるものの,必要な資金を確保できる可能性が高まる。
➁リスクが高い事業をする場合
  • 銀行は元本回収の確実性を重視するため,リスクの高い事業への融資には慎重になる。そのため,リスクを許容できる投資家を対象とした株式発行による調達が適している。事業内容の独自性や成長可能性,将来的な収益性などを,SNSなどを通じて発信し,共感を得ることで,返済負担のない資金を確保することができる。

解説

  • 資金調達方法の分類
    • 直接金融…株式や社債の発行で資金を調達する方法。出資者は誰が出資相手か認識している。
    • 間接金融…金融機関からの融資で資金を調達する方法。預金者は誰が貸し出し相手か分からない。
  • 資金の分類
    • 株式発行で調達する資金は,会社の所有権の一部を株式として売って得る資金であり,返済義務のない「自己資本」。
    • 金融機関からの融資や社債発行で調達する資金は,借りた資金であり,返済義務のある「他人資本」。
  • 上記以外の主な資金調達方法
    • ベンチャー・キャピタル(VC)からの出資…未上場株式と引き換えに,ベンチャー企業が資金を調達する方法。VCは高いリスクを承知の上で,将来の爆発的な成長によるリターンを期待して投資を行う。株式発行の一種であり,返済義務はないが,経営への助言や関与を受けるのが一般的である。
    • クラウドファンディング…インターネットを通じて,不特定多数の支援者から資金を調達する方法。事業のアイデアや想いを発信し,共感を得ることで,個人や小規模事業者でも手軽かつ迅速に資金調達を行えるのが利点である。対価を求めない「寄付型」,商品・サービスを先行販売する形式の「購入型」,未上場株式を発行して出資を募る「株式投資型」(株式発行の一種)などがある。

バブル崩壊後,政府が公的資金を投入して銀行を救済した理由を,銀行が社会で担う役割に着目して考えよう。

解答例

銀行が倒産すると,その銀行からお金を借りている企業が連鎖的に倒産したり,他の銀行への信頼も揺らぎ,取り付け騒ぎが起きることもある。また,不良債権の回収ができず,銀行の自己資本が減ると,リスクを恐れて企業への融資を控える「貸し渋り」や,すでに融資している資金を強引に回収する「貸しはがし」が起こりやすくなり,企業全般に影響が及ぶ。さらに,銀行は給与の振り込みや公共料金の引き落としなど,社会の「決済インフラ」としての役割を担っており,銀行の機能の停止は,人々の日常生活に大きな混乱をもたらす。また,グローバル化が進む現代社会においては,その影響は国境を越えて波及することも予想される。このようなリスクを回避するために,1990年代後半のバブル崩壊後,日本では公的資金の投入による銀行の救済が行われたと考えられる。

解説

銀行は経済活動において,お金という「血液」を,様々な「臓器」(経済主体)に循環させる「心臓」のような役割を果たしている。心臓が止まると,あらゆる臓器が機能を停止し,生命を維持できなくなる。政府が銀行に「輸血」(公的資金の投入)を行い,救済する理由は,銀行の破綻が当の銀行のみならず,国内外の経済や社会の混乱ひきおこすことを回避するためである。