第4章 現代の経済社会
7 金融の役割(p.186~192)
日本経済の安定・発展のために,金融機関や日本銀行はどのような役割を果たしているのだろうか?
巨額の資金を調達する場合,株式の発行と銀行からの借り入れでは,どちらが有利だろうか?
視点 2つの資金調達方法のメリット,デメリットを比較して考えよう。
効率
視点 2つの資金調達方法のメリット,デメリットを比較して考えよう。
効率
解説
銀行からの借り入れは,預金として預けられたお金が貸し出しに回ることになるので,必ず利子をつけて返済しなければならない。このため,事業が失敗するリスクが高い場合は,融資を受けることができないか,希望する融資額に足りない場合があり,また,万一返済できない場合に備えて担保が必要となる。
株式を発行する場合,お金を借りるのではなく,出資してもらうことになるので,返済する必要はない。また,少額に分けて出資を募ることができるので,資金を集めやすいが,知名度が低い企業は出資者を集めにくいというデメリットがある。
解答例
株式を発行する方が有利だと考える。なぜなら,少額の株式に分けることができるので,より多くの人から少しずつ集められるからである。また,銀行からの融資を受けるには返済能力があること=信用が不可欠であり,担保がなければ融資を受けられない。一方,株式は,事業への出資であり返済の必要がないため,会社の負担も少ないからである。
(借りたい金額や事業計画などによって,どちらが有利か変わる)
1990年代後半に,政府が公的資金(税金)を投入して銀行を救済した理由を,銀行が社会で担う役割に注目して考えよう。
解説
- 銀行が社会で担う役割とは
- 資金の融通…お金があるところから必要とするところへ融通。お金は社会の血液,銀行は血液をうまく循環させるポンプの役割を果たす。
- 決済機能…振り込みや引き落としなどの日々の決済。
- 信用創造機能…融資を通じて,元の預金よりも,見かけ上の預金額を増やすことができる。銀行の信用,融資額が返済されることが前提。
解答例
銀行は,社会の中で,資金を必要なところに融通したり,決済をスムーズに行い,経済が円滑に回るようにする役割がある。また,信用創造によって世の中に出回る資金が増え,経済を活発にする働きもある。銀行の倒産によって,信用不安が生じて,こうした金融システムが働かなくなれば,個人や企業の決済ができなくなる。また,銀行は倒産を回避するために融資の回収・新規融資の停止などを行い,企業経営に悪影響を及ぼす。つまり,銀行の倒産は,日本経済に深刻な打撃を与える可能性があるため,公的資金を投入した。