探究へのSTEP解答例

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Q 日本国憲法第96条に改正について定められているが,この手続きを踏めば,どの条文でも改正できるのだろうか?憲法の目的をふまえて考えてみよう。 個人の尊厳 民主主義

解説

憲法改正について,改正手続きを踏めば,どのような内容であっても改正できるという無限界説と,改正手続きによっても改正できない内容があるとする限界説がある。
限界説の場合,国民主権,基本的人権の尊重,国際平和の原理(9条1項)は改正できないとされる。
国民主権は,国民が本来持ち,憲法を作り出した憲法制定権力(制憲権)を,憲法の中で規定したものである。憲法の改正規定に基づいて国民主権の原理を変えることは,自己(憲法)の存在根拠を否定することになる,というのがその論拠である。
また,憲法は,人が生まれながらに持つ自由・平等といった自然権を「侵すことのできない永久の権利」と確認し,守るために作られたものである。そして,それを実現するために世界平和は切っても切れない関係であることから,基本的人権の尊重と平和主義も改正できないとする。(ただし,軍隊の保有が戦争に直結するわけではないため,9条2項の改正は可能とする。)
一方,無限界説では,国民主権の絶対性を重視する立場,つまり憲法改正権を憲法制定権力と同等に考え,主権者が選択したことであれば,仮に主権を何者かに変更する内容であったとしても,改正は成り立つと考える説である。
日本では,限界説が多数派であるが,世界的には無限界説が多数派である。