探Qの解答例・解説

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Q 現在の日本の労働者を取り巻く状況において,「労働疎外」に該当すると思われる状況はあるだろうか。考えてみよう。

解説

マルクスは,「労働」とは本来,人間が人間であることを確かめる行為であり,文化的・社会的連帯の基盤となるはずのものだが,資本主義社会では逆に人間を苦しめるものになっていると指摘した。
彼の思想の背景にあるのは,19世紀の資本主義発展期のイギリスの経済状況であるが,現代の日本においても,様々な局面で彼が指摘した「労働疎外」を指摘することができる。

解答例

  • 多くの労働者が自分たちの生産した価値を十分に分配されずに低賃金に甘んじ,一方で企業の内部留保は増加し続けている。(労働生産物からの疎外
  • 「マックジョブ」という言葉に象徴される,マニュアル化され,だれでも代替可能であるがゆえに,低賃金で将来性のない仕事が増加し,労働が単なる生きるための手段と化して,そこに喜びを感じることができなくなっている。(労働からの疎外
  • 全労働者の約40%を非正規雇用が占め,職場で正社員と派遣労働者,契約社員,パート・アルバイトのあいだの分断が進み,ともに働く仲間という連帯が失われている。(類的存在からの疎外
  • 類的存在からの疎外の結果,社会での居場所を失った人間の孤立化・孤独化が進行する。(人間からの人間の疎外