中学生のための国語のおすすめ50冊

ピアニシモ

ピアニシモ

小説

集英社文庫

辻 仁成(つじひとなり)

<たった一人で成長していかなければならない>

敵意に満ちた教室と崩壊寸前の家庭の狭間(はざま)で,行き場を見失いさまよい続ける「僕」。そんな孤独の中で,「僕」は自らの心の中にヒカルという別の人格をつくり出しました。現代日本の都会には,飛び交う銃弾の恐怖も飢餓(きが)の苦悩もありません。しかし,そこは,全く別の恐怖や苦悩に満ちた「戦場」と呼ぶにふさわしい場所なのかもしれません。教育はこうあるべきだと大人たちが語る中で,若者たちの多くはそうした「理屈」を絵そらごとのように感じています。しかし,この作品には,読み進めるのが苦しくなるほどのリアリティーと,その中でもがき成長しようとする「僕」の姿の中にある確かな希望を見いだすことができます。(Mさん)