中学生のための国語のおすすめ50冊

機関車先生

機関車先生

小説

集英社文庫

伊集院静(いじゅういんしずか)

<何も語らないで,何の代償も求めないで>

私たちの周囲には言葉があふれています。もちろん,言葉は今の生活に欠くことのできないもの。一度,言葉がなくなってしまったら,と想像してみてください。どんなに不便なことでしょうか。この物語は,瀬戸内海に浮かぶ小さな島に,一人の体の大きな先生が赴任してくる場面から始まります。彼は幼いころの病のために,何と一言も言葉を発することができません。当然,島の大人たちはいろいろと心配しました。しかし,先生は子どもたちだけではなく島の大人たちの心にも,言葉では伝えられない深く大きな思いをたくさん残していくことになるのです。私たちは,言葉の洪水の中で本当に大切なものを見失っているのかもしれませんね。(Mさん)