中学生のための国語のおすすめ50冊

カチューシャ

カチューシャ

小説

理論社

野中 ともそ(のなか ともそ)

<人生で出会ういろんなものは,形や色の違う豆みたいなものだって。ひとつぶひとつぶのんびり味わったほうが,さっさと飲みくだすより,おいしいかもしれない。>

海辺の町に住んでいる高校一年生の「真下かじお」は,学校帰りの釣りで「ショウセイ」(ロシア人の老人)に出会い,転校してきた彼の孫娘「カチューシャ」と友達になる。のろまで他人のペースに合わせることができないから,勉強も運動もできが悪い「かじお」。でも,読み進むうちにあなたはきっと「かじお」のペースに乗せられていくのだ。「かじお」や彼の父の話にいつしかうなずいている自分に気づくことになるよ。

他人にとけこもうと苦戦して疲れているあなたにはぜひ読んでもらいたい。また,「かじお」が周囲の人々とのかかわりの中で少しずつ変わっていく様子は,さわやかでいい感じだ。さらに,はるか遠い地の出来事にしか思えない戦争の問題についても,戦争体験のない世代こそ真剣に考えていかなくてはならないことを示してくれる。しかも,理屈ではなく,あなたの心の奥に触る感じで迫ってくるんだ。「カチューシャ」が「ショウセイ」を思いやる姿や,「かじお」が「カチューシャ」の心を大切にしている様子は,あなたの心に静に響いてくると思うよ。(Wさん)