アクティブ地理 インタビュー特集

エチオピア

エンデール・バラック・テゲグン さん
(እንደለ ባሩክ ተገኝ さん)
(Endale Baruck Tegegn さん)

首都:アディスアベバ
人口:12869万人(2023年)
面積:110万km2(2022年)

アムハラ語のあいさつと自己紹介

インタビュー

エチオピアは「アフリカの角」と呼ばれています。アフリカを地図で見たとき、東側にあるエチオピアが角のように見えるからです。19世紀後半~20世紀初頭、列強の植民地獲得時代に、アフリカ諸国のなかで唯一独立を保ちました。
エチオピアには80以上の民族と部族が住んでおり、80以上の言語が話されています。また、数千年にわたる歴史を持つ世界で最も古い国の一つです。
わたしの故郷は、エチオピアの首都、アディスアベバです。
首都には、仕事や教育のために国中から人が集まるので、多種多様な人々が住んでいます。近年、急速に発展しています。
また、アフリカ連合の本部がアディスアベバにあるため、年に1・2回、アフリカ諸国のすべての指導者が会談のために訪れます。アディスアベバはアフリカ人全体の故郷でもあります。

わたし自身は、3つの言語を話します。
1つはエチオピアの公用語であるアムハラ語で、学校や仕事でも使います。
多くの言語が存在するエチオピアでは、誰もが小学校で地域ごとの言語を学びます。
2つ目は英語です。幼いころから学びますが、一般的に国家試験や大学入試では英語が必要なので、高校からは英語で勉強します。
3つ目は、わたしがエチオピア正教のクリスチャンなので、ゲエズ(Ge’ez)語を使います。
とても古い言語です。文字はアムハラ語と似ていますが、話すのは難しいので一般的には使われていません。ゲエズ語は、紀元前前後エチオピアに栄えたアクスム王国で使われていました。ヨーロッパの多くの歴史学者に研究されています。

公衆衛生学を学ぶためです。
発展途上国であるエチオピアやアフリカ諸国では、先進的な施設が少なく、農村部には医療機関自体があまりありません。したがって、慢性疾患などの予防が必要です。
しかし、多くの人々が自身の守る方法や予防意識を持っていません。
そのため、公衆衛生分野やヘルスケア研究がさかんな日本で学び、アフリカ諸国に応用することを考えています。

たくさんあります。
まずは、電車やバスが時間通りに到着、出発するように計画されていることです。
さらに、わたしがもっとも驚いたのは、日本人は自分たちの社会を大切にしているということです。
日本では、リサイクルのためにゴミ箱を分別しますよね。日本の友人はペットボトルを捨てるときに、水で洗った後に毎回平らにしてからゴミ箱に入れます。友人は「収集する人が楽になる」と話していました。
他にも、子どもたちや利用する人のためを思って、公園を掃除するボランティアの人々を目にしました。
自分のことだけ考えるのでなく、周りの人を思いやる姿にとても驚きました。

インジェラという平らなパンのようなものを食べます。少し酸味があって、よくシチューと一緒に食べます。食べ物や食べ方は地域によってさまざまですが、エチオピアでインジェラを知らない人はいないでしょう。
シチューもたくさん種類があります。その中でもドロワットというスパイスを使った鶏肉のシチューは、エチオピアの人々のお気に入りです。休日やお祭りの時に作ったり、お客さまをもてなす料理でもあります。
エチオピアの食事には、さまざまなハーブやスパイスが使われていて、ちょっと辛いです。

場所によって天気が異なります。
高地の北部は寒く、低地の東部は暑いです。
アファール盆地周辺では、場合によっては50℃近くと、とても高温になります。火山が多く、人が住むには厳しい環境なので、観光地として人が訪れる程度です。標高が高い地域も多く、標高4,620メートルにもなるラスダシャン山周辺は、常に寒いです。
首都のアディスアベバは高原にあり、過ごしやすい気候です。
暑くて湿気が高い日本の夏とは違って、エチオピアは晴れて乾燥しています。
雨季には気温が下がり、朝早くから夜まで雨が降り続けます。そのため、洪水が起きることもあります。一方、一年を通して雨がほとんど降らず、干ばつが起きる地域もあります。

ハベシャリブス(Habesha Libs)という伝統的な衣装があります。わたしがまとっている布です。
「ハベシャ」は「エチオピア人」、「リブス」は「布(衣装)」を表します。
ハベシャリブスは、熟練の職人たちが伝統的な技術で織っています。軽い素材の生地には、複雑な模様などがほどこされていて、民族、地域ごとにデザインが異なります。
また、女性はナタラという薄い布を、スカーフやショールとして身に着けることが多いです。

わたしが出会った日本人のほとんどは、エチオピアに詳しくありません。そのせいで、一つの民族の国だと誤解しています。実際には数多くの民族が存在し、それぞれ独自の言語、伝統、文化、習慣を持っています。わたしたちはその豊かさと多様性を誇りに思っています。
また、エチオピアの経済的な発展についても知られていません。
日本のメディアや教育による歴史記述や固定観念が、アフリカ諸国への誤解を生んでいるのかもしれません。

わたしにとって日本への留学は、学び、成長し、つながりを築く経験に満ちています。豊かな文化、高度な技術、そして日本人の温かいおもてなしは、私の旅を本当に素晴らしいものにしてくれました。
中学生のみなさんは、さまざまな文化、言語、視点を学ぶ機会をぜひ活用してください。大きな夢を持ち、高い目標への挑戦をためらわないでください。好奇心が、あなたを多様な世界へと連れていくでしょう。可能性は無限です。
そして、教育には国境がないことを忘れないでください。日本やエチオピア、ほかの国々でのそれぞれの経験が、あなたをかたちづくります。
エチオピアやアフリカを訪れる機会は少ないかもしれませんが、訪れた際には、他とは違う未知の体験ができるはずです。
みなさんの学校生活が、笑顔と学びに満ちた実り多いものとなりますように。
頑張ってください。