蜘蛛の糸

「ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを,独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。」で始まる芥川龍之介の『蜘蛛の糸』。この話では,御釈迦様が地獄へとたらしたクモの糸をのぼる男が出てきます。

クモの糸に人がぶら下がる,これに挑戦した人がいます。奈良県立医科大学の大崎茂芳教授です。

クモの糸は,太さは数μmですが,飛んでいる虫をとらえることができ,とても丈夫です。クモの糸にはさまざまな種類があり,逃げ出すときなどにクモが降りるのに使う糸をけんいん糸といいますが,大崎教授は,約100匹のコガネグモから約3か月かけて牽引糸を集め,約19万本を束ねたひもをつくりました。これにぶら下げたハンモックに,体重約65kgの大崎教授が乗ることに成功したのです。

ちなみに,牽引糸は2本の糸からなり,1本だけでもクモの体重を支えられるようです。1本切れてもまだ大丈夫というわけです。クモの糸はただ丈夫というだけでなく,危機管理という点でもよくできているのです。

参考
『クモの糸の秘密』(大崎茂芳著;岩波書店)
奈良県立医科大学化学教室大崎研究室(「研究内容」に関連写真あり)