江戸時代の飴の味

今日11月15日は七五三詣り(まいり)の日です。

七五三に食べる千歳飴(ちとせあめ)は,江戸時代に浅草寺(せんそうじ)で売り出されたのが始まりとされています。およそ400年もの歴史をもつ千歳飴ですが,砂糖と水飴を煮詰め,練り上げる製法は昔も今も変わりません。では,現代の飴の味は江戸時代のものと同じなのでしょうか。飴のおもな材料である砂糖と水飴に着目して考えてみたいと思います。

砂糖の主成分であるスクロースは,グルコースとフルクトースからなる二糖類であり,植物の体内に存在する一連の酵素のはたらきによって,光合成でつくられた有機物をもとに合成されます。この酵素の反応効率を上回る人工的な合成法はいまだ開発されていません。そのため,スクロースを豊富に含む植物(サトウキビなど)のしぼり汁を煮詰めるという伝統的な方法が,現在でも砂糖作りの基本となっています。したがって,砂糖の味については,昔と今で大きな違いは無いと考えるのが自然でしょう。

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一方,水飴の主成分であるマルトースは,2分子のグルコースからなる二糖類であり,デンプンの加水分解によって得ることができます。現代では,精製デンプンに酸を加えて工業的に分解し,短い糖の混合物を得る方法が主流ですが,江戸時代には,蒸した米に穀類のもやし(ムギの芽生えなど)を混ぜて反応させるという方法で水飴作りが行われていました。もちろん,当時はなぜこの方法で水飴ができるかは分かっていなかったはずですが,現在では,これがアミラーゼという酵素のはたらきによることが解明されています。製造法が異なると,生成物の組成が変化するため,味が違ってくるはずです。

伝統的製法でつくった水飴を用いた江戸時代の飴は,工業的製法でつくった水飴を用いた現代の飴と,どのような味の違いがあったのでしょうか。江戸時代の飴の本当の味は知る由(よし)もありませんが,伝統的製法にこだわった飴を販売している会社は現在でもいくつかあるようです。いつか買い求め,食べ比べてみたいものです。