究極の勉強法(後編)

くり返し学習は,現在最も広く推奨されている学習法の1つです。一度で覚えられないことも,何度もくり返し見ているといつの間にか頭に入っていたという経験は,誰にでもあるでしょう。

くり返し学習が記憶を強化するしくみには,2つの相対する説があり,まだ決着がついていません。1つは,何度もくり返して学習すると,の神経回路がその時々で違ったパターンで活性化することで,思い出しやすくなるという説。もう1つは,何度も情報を入力することで,同じ神経回路が何度も活性化して増強され,記憶が強固になるという説です。前者は,「さまざまな文脈で登場する事柄の方が,いつも同じ文脈でしか登場しない事柄よりも記憶に残りやすい」という観察結果に関連して約40年前に心理学者によって提案された説にもとづいており,有力な説として現在まで支持されてきました。しかし,最近発表された ある研究成果によって,後者の可能性も高いのではないかとの見方が強まっています。

この研究で行われた実験は,24人の被験者に120人分の見知らぬ人の顔写真を4回ずつ見せ,1時間後に記憶テストを行い,どの写真がどの程度記憶されたかを調べるというものです。同時に,顔写真を見せた時に脳のどの部分が活性化したかをfMRIという方法で測定し,1回目~4回目と回を重ねるにつれて,脳の活動部位がどのように変化するかが調べられました。すると,よく記憶に残った顔では,あまり記憶に残らなかった顔と比べて,回を重ねるにつれての脳の活動パターンの変化が小さかったという結果が出たそうです。つまり,脳の神経回路の活性化が同じパターンでくり返される方が,記憶が成立しやすいと考えることができます。

どちらの説が正しいか,この研究成果だけから結論づけることはできませんが,この報告によって議論が一歩進んだのは確かでしょう。

およそ1000億もの神経細胞からなるヒトの脳は,非常に複雑で,その働きを完全に理解するのは困難です。科学的に裏付けられた「究極の勉強法」が確立されるまでには,まだまだ時間がかかりそうです。