シラタマホシクサ:東海地方固有の湿地植物

東海地方の湿地では,シラタマホシクサの花が見頃を迎えています。

シラタマホシクサは湿地に生える一年草で,白い球形の頭花をつけるので白玉星草の名前があります。 秋には湿地一面に広がる白い花を見ることができます。

シラタマホシクサの自生地は,愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の一部に限られており, 東海丘陵要素とよばれる,この地方独特の植物群をつくるとなっています。

 

シラタマホシクサ (2010年9月4日,愛知県知多郡阿久比町)
シラタマホシクサ (2010年9月4日,愛知県知多郡阿久比町)

シラタマホシクサの生息地は急激に少なくなってきていると言われています。 かつては,水田のそばで水が湧き出しているような場所に普通にみられたそうですが, 今や少数の湿地に点在するのみとなっています。 生息地が減少した原因としては,都市開発による破壊のほか,機械化・乾田化といった水田の整備が進み, シラタマホシクサの生育に適した湿地がつくられなくなったことが考えられます。

さて,シラタマホシクサの生息地を何年も観察していると,しだいに大形の多年草が増え, 小形の一年草であるシラタマホシクサから置き換わっていくように見えます。 このような植生の変化は遷移とよばれています。 まず,洪水などで空き地ができると,先駆種とよばれる植物が真っ先に生えてきます。 その後,大形の多年草や樹木が侵入して,森林になっていくのが遷移の一般的なパターンであるといわれます。

東海地方の湿地において,シラタマホシクサは先駆種で,しだいにヌマガヤなど大形の多年草に 置き換わっていくとされています。 では,どのようにしてシラタマホシクサは絶滅せずに生き続けてこられたのでしょうか。

シラタマホシクサが生息するような湿地では,植生を破壊するような何らかの現象が頻繁に起こっています。 例えば,雨により土砂が流入・流出する,動物によって地面が掘り返されるといったことにより,湿地に空きができます。 この空き地にいち早く侵入することで,今日まで生き続けていると考えられます。

近年では都市化や水田の整備により,既存の生息地が破壊されたり,また,新たな湿地ができることもなくなってきています。 残された生息地でも,遷移が進んだり,周辺の開発の影響で乾燥化するなど,絶滅の危険があります。 さらに,生息地が分断され集団が小さくなることで,遺伝子の多様性が失われ,絶滅の危険が高くなっています。

シラタマホシクサの絶滅を避けるためには,まずは残された生息地を保護することが必要です。 さらには,湿地環境を増やし,自然にシラタマホシクサが繁殖できるような環境を復元していくことが重要であると考えられます。

シラタマホシクサの頭花 (2009年9月5日,愛知県知多郡阿久比町)
シラタマホシクサの頭花 (2009年9月5日,愛知県知多郡阿久比町)
湿地に広がるシラタマホシクサ (2009年9月12日,愛知県豊明市)
湿地に広がるシラタマホシクサ (2009年9月12日,愛知県豊明市)