オンラインゲームで科学に貢献

パズルを解くことが科学や医療の進歩につながる…そんなゲームがあるのをご存じでしょうか。
ワシントン大学の研究者らによって開発された「Foldit」は,タンパク質の折りたたみを体感できるオンラインゲームです。今月5日,世界的に有名な科学雑誌「Nature」に発表された論文には,著者の一人として「Folditのプレイヤー達(Foldit players)」が書き添えられました。これは,Folditのプレイヤー達の科学的貢献の大きさを示しているといえるでしょう。

私たちのからだには約10万種類のタンパク質が存在し,生命活動のさまざまな場面で活躍しています。タンパク質は,複雑に折りたたまれたアミノ酸の鎖でできており,それぞれ独特の立体構造をもちます。タンパク質の働きを知るためには,そのアミノ酸配列だけでなく,どのような立体構造をとるかを知ることが重要です。

アミノ酸配列の情報をもとにタンパク質の立体構造を予測するのは容易ではありません。タンパク質は,アミノ酸どうしの相互作用によって,最も安定な(エネルギー状態が低い)形に折りたたまれます。コンピューターを用いた立体構造予測では,タンパク質が取りうるさまざまな構造についてエネルギー状態を計算し,最も安定なものを探す方法が取られます。しかし,タンパク質が取る可能性がある構造は膨大な数にのぼるため,計算に時間がかかることが問題になっていました。

そこで,人間のもつ「パズルを解く直感」を取り入れることでこの問題を解決しようという考えで開発されたのが,オンラインゲームFolditです。

このゲームでは,アミノ酸の性質や鎖のエネルギー状態が色分けによって可視化されており,プレイヤーはアミノ酸の鎖を実際に曲げたりのばしたりしながら最もスコアが高い(安定性が高い)折りたたみ方を探します。プレイヤーは科学者である必要はなく,誰でも参加することが可能です。また,このゲームはマルチプレイヤー形式になっており,プレイヤーどうしが協力したり,スコアを競ったりすることができます。

面白いことに,トッププレイヤーの多くはタンパク質研究とは縁がない素人でした。中にはコンピューターよりも優秀な成果をおさめるプレイヤーもいたようです。ある程度組みあがった構造を一部ほどいてつくり直す能力や,複数の人が協力して新しい戦略を試みる能力などについては,人間の方がコンピューターよりも秀でていたのだろう,と研究者は分析しています。

ゲームの結果を分析して,プレイヤーがもつ新しい「パズルを解く戦略」が見つかれば,それをコンピューターに組み込み,構造予測の効率を上げることができます。また,プレイヤーの手で未知のタンパク質の立体構造が解明されれば,新薬の開発や生命科学の進歩につながる可能性があります。鋭い直感力さえあれば,私たちも科学や医療の発展に貢献することができるかもしれません。一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

オンラインゲーム「Foldit」(英語)