立体感を与えるもの

私たちヒトは,3次元の物体を奥行きのあるものとして認識することができます。この能力は立体視(*1)とよばれ,5歳位までに獲得するとされています。

私たちが感じている物体の立体感は,両眼の“視差”によって生じています。では,視差とは何でしょうか。ヒトの眼は,正面を向いてついています。しかし,左右で眼の位置が異なるため,それぞれの視野は少しずつずれています。このずれが“視差”です(→2010年版生物図表 P.139)。物体が近いほど視差は大きくなり,遠いほど視差は小さくなります。これらの視差がによって分析され,物体を立体的に感じるのです。

ステレオグラムや3Dテレビでは,視差を人工的につくり出すことで,2次元の画像に立体感を与えています。例えば,3Dテレビでは,少しずらした2種類の画像を同時に映し,右眼には右眼用の,左眼には左眼用の映像のみが見えるようにしています。右眼と左眼で異なる映像を見せることにより,見え方のずれ,つまり視差を生じさせているのです。これには,右回りと左回りの円偏光で2種類の画像を示す「円偏光方式(*2)」などが用いられています。

3Dテレビには,臨場感や迫力ある映像の実現,よりリアルな体験ができるなどのメリットがあります。一方で,幼児については,眼の発達に与える影響や“誤った”立体視が形成される恐れなどが指摘されており,大人に対しても,バーチャルリアリティ酔いなどの課題が残されています。

*1 立体視…立体的な物体を見たとき,網膜に映るのは平面像だが,両眼で見ると立体として感じられること。視差の情報が大脳皮質で統合されることで,距離や奥行きを認識する。実体視ともいう。

*2 円偏光方式…右回り・左回りどちらかの円偏光しか通さない特殊なフィルターを使うことで,視差をつくり出すことができるというしくみ。光は波であり,その振動が一定方向に円を描いて回転する特別な光を円偏光という。ふつうのサングラスと変わらない非常に軽い眼鏡をかけるだけで,簡単に立体視ができる。

参考:Newtonムック『次世代テクノロジー』