クリック
プロフィール
Francis Harry Compton Crick
イギリス
1916年6月8日 ~ 2004年7月28日
-
ノーベル生理学・医学賞 (1962年) 「核酸の分子構造および生体の情報伝達におけるその重要性の発見」
おもな業績
- DNAの分子構造を解明(1953年) DNAの分子が二重らせん構造であることを解明した。
解 説
物理学,化学の研究をしていましたが,第2次世界大戦後に生物学を学びはじめました。その頃,物理学や化学の研究手法を使って,生命現象を解明する研究が拡大していて,物理学や化学の研究者が,生物学の研究に移っていました。
メンデルが遺伝の法則を発見してから,遺伝子についての研究が進み,遺伝子が染色体にあることが証明されました。そして,肺炎双球菌やウイルスの研究から,遺伝子の正体がDNAという物質であることも確かめられました。
そのDNAはどのような物質なのか。そして,それはどのように遺伝の情報をもち,子孫に受けつがれるのか。生物学の研究の大きなテーマでした。
クリックは,ジェームズ・ワトソンとともに,X線回折という実験のデータをもとにして,DNA分子の模型を組み立てて,ついに遺伝子の構造をつきとめることに成功しました。また,その構造から,DNAの複製についての考察も行いました。
X線回折の実験を行ったのは,モーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンでした。この大発見で,クリックとワトソン,ウィルキンスの3人は,1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
構造解明に使ったX線回折の写真は,フランクリンが撮影したものでしたが,彼女は1958年にがんで死亡していました。ノーベル賞は生存者のみに与えられることになっていたため,候補にはあがりませんでした。
DNAは,二重らせんとよばれる構造をもった細長い分子で,4種類の物質が数十億も直線的に並んでいます。そして,4種類の物質の種類と並び順が遺伝の情報になっています。DNAによって,生物のさまざまな特徴が現れ,また子孫に受けつがれます。
クリックたちの発見によって,今では遺伝子を解読し,人工的に生物の遺伝子を変えることもできるようになりました。その技術は,農業,医療,犯罪捜査などあらゆる方面で役に立っています。