愛知の文学

崖(がけ)

作品地域分類作者
崖(がけ) 南知多郡南知多町 紀行 広津和郎(ひろつかずお)

広津和郎は小説家・評論家。明治の小説家広津柳浪(ひろつりゅうろう)の二男として明治24(1891)年に東京で生まれる。自由思想家としての批評と真実を追究する作家の姿勢を貫いた。昭和43(1966)年に死去。

大正3(1914)年,軍隊に入営中に父が病気となった。除隊後,毎夕新聞社に入り,その年の9月,父の保養のために名古屋の兄のもとに行き,翌年父を知多半島の先端の師崎(もろざき)にある海浜院(かいひんいん)に転地療養させた。大正5(1916)年の夏,師崎保養中の両親を訪れ,父に自らの身辺の事情を話した。この間のことを大正6(1917)年,「文章世界」に『思ひ出した事』(後に『崖』と改題),翌年「新潮」に『師崎行』として発表した。家庭生活を私小説風に描いた一連の作品のうちの一編で,師崎の風土がよく描かれている。

  • 広津和郎
    (ひろつかずお)

  • 師崎港(南知多郡南知多町)

  • 広津柳浪が入院していた海浜院
    (南知多郡南知多町)

作品

昨年の事であった。父が知多(ちた)半島の師崎(もろざき)の病院に入っていたので,私は九月の初めから一か月ばかり,ある翻訳の仕事を持って同地に出かけて行った。